お椀の専門店 三義漆器店
 塗りの達人「賢三」・筆の達人「隆華」の二人の伝統工芸士の作り出す高級漆から
食器洗浄機・電子レンジ対応のお椀などど、器全般の製造をいたしております。

ブログでは、工房や工場、スタッフの日常などの日々をご紹介していきます。



企業の覚悟 3

福島をつくる(11) 第1部 企業の覚悟 三義漆器店(会津若松)



http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2015/01/post_11320.html
 
 
 
 
<使う人の意を酌む>
 会津若松市門田町の三義(さんよし)漆器店の展示場に約1000種類の器が整然と並ぶ。大きさや形、色合い、塗る材料、蒔絵(まきえ)などの装飾方法が異なる。
 「会津塗」には、経済産業大臣指定の伝統工芸士を含め約20人の職人が携わる。「塗り」や「蒔絵」の作業は専門性が高く、分業で行う。商品の生産量を増やし、後進に技を伝え、会社を大きくした。
 一方、社長の曽根佳弘(50)は合成漆器などの新しい商品を増やし、思いついた考えを商品化させた。反発は社内外からあった。
 小売店側からの要望は、素材を感じさせる木目のはっきりとした器だった。漆を何度も塗ると木目が隠れる。塗料を樹脂にし、重ね塗りを省いた。地元の同業者から「半端もんだ」とささやかれた。
 曽根は会津塗の伝統工芸士で父の賢治(75)が営む漆器工場で育つ。20歳で入社し、職人かたぎの賢治に技をたたき込まれた。そして何度も聞かされた。「会津人は口べただ。信用されるまで人に尽くせ」
 父のこだわりは曽根の器づくりに携わる信条になる。作り手の考え以上に、買い手に尽くす視点が父の教えや会津の精神と信じ、消費者の喜びを最上の評価と受け止めた。
 現在、会津塗の食器は生産全体の5%、他は新しい種類が占める。生産内容は変わったが、社員数と工場数は父の代から倍に増えた。曽根は「選択は間違っていなかった」と父に感謝する。
 「器にシールを貼ろう」。曽根が提案した際、社員は強く反対した。
 みそ汁用の内側が黒い椀(わん)に「白みそ派」、赤い椀に「赤みそ派」、大きな椀に「実だくさん汁」と貼り、購買意欲を刺激しようとした。ただ、工程を増やせば生産性が落ち、出荷が遅れる。「どこの会社もやっていない。価値があるのでしょうか」。何人もの社員が異を唱えた。
 曽根は「他社と同じ発想では勝てない。消費者が食べ物を入れた器を想像できるようにすれば必ず売り上げが伸びる」と粘り強く説いた。社員は根負けし、曽根も一緒にシールを貼った。出荷先の小売店では品切れ状態となり、「日本初の試み」と評判になった。
 若手からは「あさげ用、ゆうげ用を表すシールはどうか」と積極的な声が出始める。工夫と独自性へのこだわりが社員に芽生えた。(文中敬称略)